シシリー・ソンダースという方をご存知でしょうか。
どうも、コムヨシです。
臨床宗教師という資格を得るために、宗教学や死生学を中心とした勉強をしています。
死生学Ⅰというコマでは、「死から生を学ぶ」ということを軸にして講義が進められています。
先日受けた講義のテーマが「近代ホスピスとシシリーソンダース」というものでした。
簡単にいうと、近代的なホスピスはシシリー・ソンダースによって作られた、っていう内容で、ホスピスが作られた経緯やどんな人がどんな思いで作ったのか。
人の心に寄り添う活動をしていくに当たって、とても大きな気づきを与えてくれる内容でした。
今回の記事では、シシリー・ソンダースがなぜ、どんな思いでホスピスを設立したのか、簡単にまとめてみようと思います。
ホスピスって何?
まずはホスピスについて簡単に。
一言で言うと、
「死にゆく人をケアするための施設」
と言う感じで、死が間近に迫っている人に対して「治す」ということではなく、ケアするということが目的とされているようです。
そういった概念をもった施設をホスピスと呼ぶのですが、その施設を作ったのがシシリー・ソンダースと言う女性です。
ホスピスの歴史は意外と新しく、1967年の設立になっています。
シシリー・ソンダースって誰?
ではシシリー・ソンダースについて簡単にまとめてみます。
シシリーの生い立ち
- 1918年イギリス生まれ
- 両親が不仲だったみたいです
- オックスフォード大学で政治学を学ぶ
- 大学中退
- 看護師を目指しますが、身体的な理由で挫折
- ソーシャルワーカーを目指し大学へ復学
- 父母別居
- 回心(キリスト教)→自ら進んで信仰の道に入ること
- 医師免許取得(38歳)
- ホスピス設立
ホスピス設立のきっかけ
そんなシシリーはどんなことがきっかけで、ホスピスを作ったのでしょうか。
恋人に届かなかった慰めの言葉
シシリーはメディカルソーシャルワーカーとして勤めていました。
その時にデイビッド(40歳)という死を間近に控えたユダヤ人患者と出会いました。
そしてシシリーとデイビッドは恋に落ちました。
シシリーは亡くなろうとしている恋人デイビッドに対して、次のような聖書の一節を伝えたそうです。
たとひわれ死のかげの谷をあゆむともわざわいをおそれじ、なんぢ我とともにいませばなり
詩篇23篇4節
クリスチャンの人であれば、誰でも知っているような有名な旧約聖書の一説だそうです。お葬式なんかで必ず読まれるのだそう。
そんなシシリーの慰めに対して、デイビッドはこんなふうに答えたそうです。
ぼくは君の心の中にあるものだけが聞きたい
そしてさらに、
ぼくはね、君の家の窓になるよ
シシリーは、キリスト教徒である自分がユダヤ教徒であるデイビッドにどんな慰めが適しているか考えた末に、旧約聖書の詩篇23篇を読んで聞かせたそうです。
相手の立場を考えて、相手にとっての慰めになる言葉を選んで伝えたのですね。
それですら中々できないことだと思いますが、ですが、デイビッドが聞きたかった言葉はそこではなかったようです。
「君の心の中にあるもの」
とても深い言葉ですよね。
その後デイビッドは亡くなり、全ての遺産がシシリーに渡りました。
シシリーは後にその遺産を基にホスピスを設立することになります。
死にゆく人の尊厳を守りたい
デイビッド死去の後、シシリーは同僚の医者から次のような言葉をかけられました。
学校に戻って医学を勉強しなさい。
末期患者を見捨てているのは、医者なんだ
とても奥深い、覚悟ある言葉ですよね。中々医者の口から言える言葉ではないと思います。
当時シシリーは、死にゆく人が人間としての尊厳が得られていないと感じていました。
当時のイギリスの医療現場では、医師が全ての力を握っていたので、
- 末期患者を見捨てているのは、医者だ
- 死にゆく人の尊厳が得られていない
という課題を解決するためには、医師になって現場を変えていった方が良いのではないかという結論に至ります。
そして38歳で医師免許を取得しています。
医師として働く中で、アントニー・ミチュニビッチという末期がん患者と出会います。薄々感づいていらっしゃると思いますが、そうです、二人は恋に落ちます。
シシリーとアントニーはこんな会話のやりとりをしました。
A「ボクはもう死ぬの?」
C「ええ」
A「長くはないの?」
C「ええ」
A「ありがとう。そう告げるのは、辛くないですか?」
C「ええ、辛いです」
A「ありがとう。聞くのは辛いけど、言ってくれるのも辛いですね」
※A=アントニー、C=シシリー
明らかに、デイビッドの時とは患者への対応の仕方が違いますよね。
かなり率直に、患者からの問いに対して答えているのがわかります。
あらゆる方向から全人的にケアするホスピス
1967年にシシリーによって設立された「St.Chrisopher’s ホスピス」は、
治すための医療(Cure)ではなく、死にゆく人を全人的にケア(Care)する場所としてスタートしました。
全人的っていうのはボクも聞き慣れない言葉でしたが、かなり重要なワードで、
人を、身体や精神などの一側面からのみ見るのではなく、人格や社会的立場なども含めた総合的な観点から取り扱うさま。
つまり、体だけとか心だけっていう見方ではなくて、あらゆる方向からその患者さんを見る姿勢ですね。
かなり画期的な概念ですよね。
「死にゆく人の尊厳を守る」ための医療を実現させたっていうことです。すごいっす。
シシリーが設立したホスピスでは
- 非階層的で
- 多領域からなるチームケア
- 患者と家族をともに支えるケア
それまでの医療現場の常識にとらわれない手法が特徴的で、特に多領域からなるチームケアという考え方は最近ようやく一般的になってきた考え方のようです。
最後に
最後に、シシリーの有名な言葉を載せてこの記事を終わりたいと思います。
Not doing,but being. Be there
今日も一日陽気ぐらし!
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